Story 3

クレイン伊奈には、たくさんの大人や子供が馬に乗りに来ていた。


健康志向の人や、馬の手入れが好きな人、馬場を覚えたい人、障害を飛びたいという人


皆さん、目的は様々。


いつの日か舞月は、馬と一緒に障害を飛んでみたいと思うようになっていた。

いつか、コガネサンコウに雷で跳ねられたとき、「怖い!!」と言っていた舞月が、馬と一緒に跳べるのか?!


「人一倍怖がりの舞月にそんなことができるのか?! まぁ何でも目標を持つということは良いことだ」と思って、母は舞月のやりたいようにやらせた。


最初は、横木通過。それを毎日、毎日。


その後、クロスバー(30cm位)を、飛ぶというより跨ぐ。


そんなとき、風か何かで他の馬が暴れ、舞月が乗っていた馬も暴れて落馬。それが初めての落馬だった。


怖かったというより、ビックリした方の気持ちが強かった。


そのとき、雨上がりで馬場はグチャグチャ。はいてきたキュロットから中の下着、長靴(チャップス)までも汚れてしまった。母は、それを洗い流し、クラブハウスで干させてもらった。


初めて落馬した舞月、指導員から「良い経験したな」と言われた。


その頃には、クラブの中で友達もたくさんできて、暇さえあればクラブの中を走り回っていた。


当時、クラブでは定期的に試合やイベントが行われていた。毎回、参加した。夏のお祭り、クリスマスパーティなど、馬に乗って指導員たちがパフォーマンスしている姿はとても綺麗だった。


舞月よりも年上のお兄さんやお姉さん、大人が障害を飛んでいる姿を見て「舞月も参加したい」と。また一つ目標ができた。


クラブのレッスンの他に、土・日・祝の朝、夜に特別なレッスンが行われていた。もちろん、それらに参加している人は競技志向の大人やジュニアだった。


当時の所長さんに、舞月は声をかけられた。


そんな特別なレッスンがあるなんて知らなかったが、興味本位で舞月は参加してみた。


一言で言うと、通常のレッスンとはまるっきり違って本格的だった。


朝は7時から45分間。冬はとても寒く、馬場が凍っていることも多く、馬だけではなく諸々の準備までジュニアがやった。それは、ちょっとした中学生の部活のようだった。


夜は、ジュニアだけのレッスン。 A班とB班に分けられ、技術のあるジュニアはA班。もちろん舞月はB班。


それでも舞月には、初めてのスパルタレッスンに思えた。


 A班の練習は、馬に乗りながら両手を横にして障害を飛んでいた。その中学生のお兄ちゃんやお姉ちゃんたちは、いつしか舞月にとって憧れの存在になっていた。


舞月はB班の中でも一番年下で、誰よりも怖がりだった。