Story 4

まもなく3級ライセンスを取り、何度かクラブ内の試合も経験し、初めて外の試合に出たのは舞月が5年生のとき。

場所は御殿場。障害の高さはクロスバー(30cm)。


結果は、入賞どころか、馬の誘導ができずに違う障害を飛んでしまうアクシデント。他のジュニアは金賞に入賞した。


初めての悔しさ、悲しさ。


入賞式、舞月は一人で馬房掃除をしていた。ライバルであり友達でもあるジュニアが入賞台に立っている姿を喜んであげられなかった。


喜んであげる余裕が無かったのだろう。自分の情けない結末に。


母は、声をかけなかった。自分でこれからどう乗り越えていくか?! 怒っても、慰めても、スポーツの世界はそんなに甘くない。


舞月は次女として生まれ、長女の姉とは7歳も離れているため、家族からはいつも甘やかされて育った。もう、誰も助けてくれない世界。


その後、埼玉県民大会にも出場した。


無事ゴールを切った瞬間、馬のスイッチが入ってしまい、暴走。


コース内を何周もした。周りからの声「巻乗り〜」


馬を止められない舞月。ついには、指導員に止めてもらった。またまた入賞できず。他のジュニアは良い結果で終わった。常にアクシデントが起こる舞月。他のジュニアより怖がりで、甘ったれで、それでもほんの少し前進した舞月。


馬の怖さを前回とは違う意味で経験した舞月。

「怖いなぁ〜、やだなぁ〜」


たびたび言うようになった。母が「怖いんだったら止めれば」と言うと、舞月は「やだ! 馬に乗る!!」と言って乗るものの、馬を動かせないレッスンがあった。45分間ずっとサークルの中に居るだけ。


そのレッスン後、母は舞月を殴った。周りの目も気にせずに。


母は、分かってもらいたかった。怖さということを克服してもらいたかった。


舞月の初めての涙。


舞月自身は分かっている。情けなくて、情けなくて自然と涙が出た意味を。